ワクチンって…?

これから子犬を飼おうとお考えの方の中には「ワクチンという言葉はよく耳にするけれども、具体的にどんなものなのかよく解らない…」という方も多いのではないでしょうか?

ここで言う『ワクチン』とは複数の伝染病を予防するためワクチンをひとまとめにした『混合ワクチン』のこと。

法律で1年に1回の接種が義務付けられている『狂犬病ワクチン』とは別モノで、一般的には『混合ワクチン』、『狂犬病ワクチン』と呼び分けることが多いようです。

近年、混合ワクチンの必要性に関してはだいぶ認識されつつありますが、“接種が必要”という部分は浸透しているものの、「なぜ必要なのか」、「どういった効果があるのか」といった本質的な部分をきちんと理解されている飼い主さんはまだまだ多くはないようです。

よく「ワクチンを接種するまで子犬を屋外に出せないのですか?」とか「ワクチンを接種するまで先住犬と接触させることは出来ないのですか?」といったご質問を頂きますが、こういった疑問を抱いている方はまだまだ混合ワクチンに関する認識が甘いと言わざるを得ません…。

中には混合ワクチンを『健康かつ丈夫で病気にかかりにくい身体にパワーアップさせる薬』とか『あらゆる病気を防いでくれる万能薬』のような誤った解釈をされている方もいらっしゃるようですが、混合ワクチンはあくまでも『特定の伝染病を予防する抗体を体内に植え付ける予防接種』に過ぎません

ですので、混合ワクチンを接種していない状態で屋外に出して遊ばせても、先住犬と一緒に遊ばせても問題はなく、あえてこれらの状況で避けるべきケースを挙げれば『伝染病のウィルスが媒介するような場所で遊ばせる』ことや『伝染病ウィルスのキャリア(感染犬)と接触させる』ことさえ避ければ基本的に問題はないのです。

ペットショップの店員さんでも経験の浅い新人さんやアルバイトさんだと、そういった細かな部分までを正しく説明出来る方が少ないため、結局のところ「ワクチン接種前は屋外に出してはダメ」とか「ワクチン接種前は他のワンちゃんと接触させてはダメ」といった端折った説明で済ませてしまい、そういった説明を受けた人たちを介して正しくない知識が広まっているように感じてしまいますね…。

混合ワクチンの接種時期と回数

子犬は毎日飲む母乳(特に初乳)から伝染病に対する免疫力を譲り受けます。

通常、生後60日齢を迎える頃から伝染病に対する免疫力は徐々に低下(消滅)しはじめますが、低下(消滅)する時期は個体差によって異なり、それよりも早くから低下しはじめる子もいれば、それ以降に低下しはじめる子もいます。

そのため、生後60日齢頃に免疫力が低下しはじめる(消滅した)と想定して、一般的には生後60日齢前後に1回目の混合ワクチン接種を行います。

ただし、子犬を生後60日齢頃に迎え入れた場合、既に1回目の接種時期を迎えているからといって接種を急ぐ必要はありません。

この場合、1回目の接種は新しい環境に馴染んでから(目安として子犬を迎えて1週間程度経ってから)の方がより安心です。

1回目の接種をした時点で免疫力が低下しつつある(消滅している)子であれば、その時接種した混合ワクチンは抗体として体内に残って本来の効果を発揮しますが、まだ免疫力が強く残っている子だと接種自体がほとんど無意味なものとなってしまいます。

つまり生後70日齢まで免疫力が持続する子だった場合、生後60日齢での混合ワクチン接種はあまり意味がありません。

したがって、その約1ヶ月後にあたる生後90日齢前後に2回目の混合ワクチン接種を行うのです。

このように子犬は伝染病に対する免疫力がいつまで持続しているか判らないため、複数回に分けてワクチンを接種するのが一般的となっています
※厳密には検査を行えば判りますが結果が出るまでにそれなりの日数が必要となるためあまり現実的ではありません

接種時期は1回目が生後60日齢前後、2回目は生後90日齢前後の計2回接種が一般的ですが、2回接種しておけば大丈夫という意味ではありません。

大切なのは接種回数を重要視するのではなく、免疫力が低下しつつある(消滅した)時点にタイミング良く接種出来ているかどうかがポイントなのです。

なお、日本においては2年目から(成犬になってから)は年に1回ペースでの接種が一般的となっており、国内のほとんどの動物病院では年に1回の接種が推奨されています。

しかしながら、アメリカをはじめとした一部の海外においては「抗体(免疫力)は1年以上持続する」という考え方から接種するペース(間隔)が見直されつつあり、1才の時点で接種した後は3年間隔での接種が一般的となっていいるようです。

いずれにしても、混合ワクチンは接種しておけば絶対に大丈夫というものではなく、稀なケースではありますが、接種によってアナフィラキシーショック(アレルギーによるショック症状)を引き起こすケースもあり得ますので過信は禁物です。

念には念を入れて…

前述の通り、生後90日齢前後に行う2回目の接種をもって1年目の混合ワクチン接種は完了となりますが、実はそれでは不十分という考え方もあります。

非常に稀なケースではありますが、個体差によっては生後120日齢頃まで母乳から受け継いだ免疫力が持続する子もいるようです。

つまりあなたの愛犬が生後120日齢頃まで免疫力が持続している子だった場合、これまで接種してきたワクチンは無駄なものとなってしまうため、1年目は生後120日齢を少し過ぎた頃に最後の追加接種を行うという考え方があるのです

当然、獣医師によっても対応(考え方)は異なります。

混合ワクチンの接種自体が子犬(特に小型犬)にとって負担となるため、1年目に3回もの接種は不要という考えの方は決して少なくありません。

以下は私の個人的な考え方になりますが、生後70~90日齢までにとりあえずの意味で接種をしておいて、生後120日齢を過ぎた頃に追加接種(1年目の最後の接種)をする方法が理想的と考えます。(あくまでも私見です)

この場合、最初の接種を行うまでの期間が必然的に通常(生後60日齢前後に接種する場合)よりも長くなりますので、当然その期間は伝染病感染に対してのリスクが増します。

そのリスクを回避する意味で3回に分けて接種するという考え方があるのです。

混合ワクチンの種類

伝染病を予防するワクチンには単体のワクチン(1種類の伝染病に対する抗体)をはじめ、2~9種類の混合ワクチン(複数の伝染病に対する抗体がひとつにまとまったもの)まで様々な種類があります。

混合ワクチンは種類が多ければ(多種混合の方が)より安心という単純なものではなく、種類が増えればそれだけ身体に負担になるということを忘れないでください。

また、単体ワクチンと混合ワクチンでは効果の現れ具合も異なり、種類が増えるに従い「範囲は広く、効果は浅く」といった感じになります。

一般論として、生後60日齢前後の家庭犬(ペット)に接種する混合ワクチンは5種~6種混合程度で十分ですが、獣医師とよくご相談の上、適切な(犬種、生後日数、飼育目的に適した)ものをお選びください。

極小サイズと言われるような小さいタイプの子は体力的に劣る場合が多いので、あまり早い時期に身体に負担のかかり易い多種混合ワクチンを安易に接種することは考えものです。

現在、街の動物病院に流通している混合ワクチンは5種混合~9種混合が主流で、その内訳は次のとおりです。

5種混合 6種混合 7種混合※1 8種混合※1 9種混合
犬パルボウィルス感染症
犬ジステンパーウィルス感染症
犬伝染性肝炎
犬アデノウィルス2型感染症
犬パラインフルエンザウィルス感染症
犬コロナウィルス感染症
犬レプトスピラ病※2
(2種類)

(2種類)

(3種類)

※1. 7種、8種混合ワクチンの内訳は製薬会社によって若干異なる場合があります
※2. レプトスピラ病はコペンハーゲニー型、カニコーラ型、ヘブドマディス型、イクテロヘモラジー型など複数種に分類されます(製薬会社によってワクチンに含まれている種類が異なります)